小説メモ

古今東西、読んだ本についてのメモ

『黒檀』 カプシチンスキ

 

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黒檀

著者:リシャルト・カプシチンスキ

訳者:工藤幸雄/阿部優子/武井摩利

発行所:河出書房新社

2008年8月30日 発行

 

 

 

暑い。電気式スチーマーになった部屋で、今にも人間肉まんが出来上がりそうである。この時期、出荷先も需要もないのでただちにコンビニへ逃げ出すことにする。

 

オアシスがそこにあった。

 

コーラと氷をパスモが払い、はじに設けられた休憩スペースでぐちゃぐちゃに混ぜる。コーラはロックに限る。

 

そうしてちょっと涼しげな気持ちになってコンビニを出ると、アフリカにいた。

 

命の危険を感じるほどに熱い。人々はみな陰にじっとして、この日差しが閉じるのを待っている。

 

得体のしれない虫がたくさんいる。なんだか気だるくなってきた。どうやらマラリアに罹ったようだ。医者はいるのだろうか。朦朧としながらこの村に一人しかいないという医者にすがる。アフリカの病はアフリカの治療法で治る、はずだと思うことにする。

 

完全に回復するとクーデタに出くわした。ここではひっきりなしにクーデターが起こっている。

 

いろんな人がいる。黒人が黒人を奴隷にするし、全体主義もここで生まれたらしい。宗教もいろいろ。ご飯と水とお金はない。それでも何か精神的に満ち足りた気持ちになってくる。僕は精神的に大切なものを手に入れていた。

 

作者がアフリカのいろいろな国で出くわした出来事、文化などを細かい章立てで読めるので読みやすくて面白い。とにかく多様性とか価値観の違いとかに驚かされます。最も勧めたい作品のひとつになった。