『悪童日記』 アゴタ・クリストフ
著者:アゴタ・クリストフ
訳者:堀茂樹
発行所:早川書房
2001年5月31日 発行
戦争が激しくなり、おかあさんの母親、〈魔女〉と呼ばれるおばあちゃんの家に疎開させられた双子の話。
双子は学習として作文を書く、お互いにテーマを出し合い装飾の無い事実だけに基づいて作文を書いていき、相手の添削で合格したものがこの悪童日記を構成する。という作りになっている。
双子は自分たちを俯瞰した目で見ている。あくまで自分たちは物語の登場人物、この物語で起こる非情なできごとは彼らにとって虚構みたいだ。
おかあさんは双子を預けて、危険が増しつつある〈大きな町〉に戻ってしまった。双子は二人でひとつだ、だから「ぼくら」という一人称を使う。
「ぼくら」は様々な苦痛に耐えるために、多様な訓練をする。痛みに馴れるためにお互いを殴りベルトで打ち火で炙りナイフで刺す。乞食の練習をする。盲と聾の練習、断食の練習、不動の練習、残酷に殺す練習をする。これらの訓練は「ぼくら」の正義を守るためにある。彼らはあまりに純粋で、非常に賢い。
やがて双子が疎開した町も空襲が頻繁に行われるようになり、戦争も終わりに向かっていく。
訓練し学習して成長していく双子が、時代の変化のなかで逞しく生きていくお話。と言ってしまえばそうなんだけど、双子の作文であるひとつひとつの小話がとても面白いので、ぐろい話が苦手でなければとってもお勧めです。
あと、エンディングが稀に見る素晴らしさ。
関連する作品のお勧め
○『ふたりの証拠』『第三の嘘』 クリストフ
『悪童日記』の続きの作品(続きと言っても単純に続きではない.. )。どちらの作品も物語としても面白いし、文学的な試み(と言っていいのか分からないけど)としても面白い。ただ『悪童日記』だけで綺麗に簡潔してるので、どうしても気になる方は読んでみてください。という感じ。
ふたりの証拠 第三の嘘
著者:アゴタ・クリストフ
訳者:堀茂樹
発行所:早川書房
2001年11月1日 2006年6月1日 発行
こちらも戦争の話。といってもそれだけじゃなくて、主人公ビリーが自分の人生の時間軸を発作的に移動しちゃって、気づけば戦争の真っただ中にいて捕虜にされたり、ドレスデンの爆撃に出くわしたり、宇宙人に誘拐されてペットにされたり、普通に幸せな結婚生活送ったり、と色んな場面が順不同瞬間的に移り変わっていく。おかしく面白い、いちおうSF小説。
著者:ヴォネガット
訳者:伊藤典夫
発行所:早川書房
1978年12月31日