小説メモ

古今東西、読んだ本についてのメモ

『黒檀』 カプシチンスキ

 

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黒檀

著者:リシャルト・カプシチンスキ

訳者:工藤幸雄/阿部優子/武井摩利

発行所:河出書房新社

2008年8月30日 発行

 

 

 

暑い。電気式スチーマーになった部屋で、今にも人間肉まんが出来上がりそうである。この時期、出荷先も需要もないのでただちにコンビニへ逃げ出すことにする。

 

オアシスがそこにあった。

 

コーラと氷をパスモが払い、はじに設けられた休憩スペースでぐちゃぐちゃに混ぜる。コーラはロックに限る。

 

そうしてちょっと涼しげな気持ちになってコンビニを出ると、アフリカにいた。

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『紙の動物園』 ケン・リュウ

 

f:id:boookboook:20170724013404j:plain紙の動物園

著者:ケン・リュウ

編・訳者:古沢嘉通

発行所:早川書房

2015年4月25日 発行

 

 

衝撃的な短編集だった。勧められて表題作「紙の動物園」をひとまず読んでみたら、とてつもなかった。短い作品の中に時間的にも空間的にも奥行きが広くあって、読後はこんなところまで連れてこられたのか、と思わず泣いた。

最初はうまいファンタジー物語かと思ったのに、そんなもんじゃなかった。

 

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『存在の耐えられない軽さ』 ミラン・クンデラ

 

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存在の耐えられない軽さ

著者ミラン・クンデラ

訳者:水野忠夫

発行所:河出書房新社

2008年4月30日 発行

 

 

 

タイトルが何とも特徴的だ。みなさんはどんな物語を想像するだろう。僕はと言えば、小兵力士がなかなか勝てないことから「存在の耐えられない軽さ」を嘆く物語、かと思いきや。

 

ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹【編集者】

静かな生活に政治が暴力的に介入する。満ち足りた日々は抑えきれない欲望に乱される。派手なストーリーに人生についてのしみじみと深い省察が隠れている。これが現代に生きる知的な人間の姿だ。ぼくはテレザともサビナとも暮らしてみたい。

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『悪童日記』 アゴタ・クリストフ

 

f:id:boookboook:20170621051451j:plain悪童日記

著者:アゴタ・クリストフ

訳者:堀茂樹

発行所:早川書房

2001年5月31日 発行

 

 

 

戦争が激しくなり、おかあさんの母親、〈魔女〉と呼ばれるおばあちゃんの家に疎開させられた双子の話。

双子は学習として作文を書く、お互いにテーマを出し合い装飾の無い事実だけに基づいて作文を書いていき、相手の添削で合格したものがこの悪童日記を構成する。という作りになっている。

双子は自分たちを俯瞰した目で見ている。あくまで自分たちは物語の登場人物、この物語で起こる非情なできごとは彼らにとって虚構みたいだ。

 

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『巨匠とマルガリータ』 ブルガーコフ

 

 

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巨匠とマルガリータ

著者:ミハイル・ブルガーコフ

訳者:水野忠夫

発行所:河出書房新社

2008年4月30日 発行

 

 

 

ふ。と池澤夏樹の世界文学全集を読もうと思い立ち、手始めに最も人気がある(らしい)この小説を読んでみた。

 

ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹

時として小説は巨大な建築である。これがその典型。奇怪な事件や魔術師やキリストの死の事情などの絵柄が重なる先に、ソ連という壮大な錯誤の構築物が見えてくる。この話の中のソ連はもちろん今の日本であり、アメリカであり、世界全体だ。

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池澤夏樹 = 個人編集 世界文学全集

 

池澤夏樹 = 個人編集 世界文学全集」 河出書房

 

読書家・小説家の池澤夏樹が個人編集した世界文学全集で、結構売れたみたい。

9.11以降の時代を読み解くような選書をしたそうな。とりあえず、カプシチンスキの『黒檀』は面白い。

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